さて真司に連れられた兄弟たちはとりあえず町に行くことにした。…といっても昔のことなので当然ビルなどは一切ない。
武志「うわぁっ田舎じゃん!!よくこんな所で生きていけるよなぁ。」
それを聞いた真司は本当に大丈夫なのか?…と思いつつ尋ねてみた。
真司「おい…お前ら…本当にこの時代の人間じゃないのか?脱走兵ではないよな…いや、真珠湾でのあの力を見ると脱走兵には思えんが…」
武志「だからってなぁ…俺らはそもそも兵隊でもないし…ゼロ戦の操縦がうまいって言ったってあれはゲームで鍛えたもんだし…」
そこに龍太が割って入って来た。
龍太「なぁ…腹減ったよな。真珠湾で敵を落として空母にたどり着いてから少ししか食ってねえし…」
武志「確かに減った。オッサンなんか食いたい。」
真司「まぁ私も腹は減っていた…。そうだ!!この近くにお勧めのうどん屋がある。いかないか?特別におごってやる。」
これを聞いた兄弟は「何だ…うどんかよ…」と思ったが腹の減りには、かなわなかったので渋々行くことにした。
うどん屋についた。昔にはどこにでもありそうな感じの木造の建物だった。そもそもこの時代はそんなにコンクリートでできている建物がない。
「いらっしゃいませ」
うどん屋に入ったと同時に聞こえた。よく見ると結構綺麗な人だった。
龍太「あ…兄貴…俺あの人タイプだぜ。」
武志「あぁ、なんか上手く言えないけどやばいな。」
真司「どうだ…なかなかいい女だろ?」
真司はどうやら惚れているらしい。だからうどん屋に来た…と兄弟は推測した。
このうどん屋は一面が畳だった。とりあえず案内され座布団に座った。
龍太「あんな人いるなら昔でも悪くはないな〜〜〜」
武志「まぁな。ここも全部和室でおちつくわぁ〜〜」
そして兄弟は気になってることを聞き始めた。そう、真司があの店員さんに惚れているかどうかである。
武志「ところでオッサン…あの人名前なんていうの?」
真司「あの人か…そうだな…聞いたことがない」
龍太「と、言うとこの店に何回も来てるんですな?」
真司「そ…そんなことは無い!!週に4回位来てるだけだ!!」
武志「いつから?ま…まさか…俺らと同じ年代から来てるのに一度も名前を聞いたことが無いの!?」
真司「ち…ちちちち…ちがう…」
どうやら図星だったらしい。ずいぶんと片思いを続けているものである。
武志「メルアドとか聞けばいいのに…ん?この時代には無いんだっけ?」
すると此方がずっと話してて注文するのが遅かったのか向こうが催促をかけてきた。
店員「あの…ご注文はまだお決まりでは無いでしょうか?」
武志と龍太は顔を見合わせてお互いニヤリと笑った。この二人がこんな笑い方をするという事は何かたくらんだ証拠だ。
武志「おねーちゃん!?おねーちゃんだね!!会いたかったよーーー」
龍太「こんな所で生き別れのおねーちゃんに会えるなんて…どうして僕らを捨てたのさ!!」
意味がわからない。とりあえずこの二人は向こうを困らせて自分らより少し大人な真司にその人と話す機会を与えようと思ったのだ。
真司「お…お前らのお姉さんだったのか…」
店員「いえ、ちがいますよ。人違いじゃ無いんでしょうか?」
武志「そ…その口癖はまさしくおねーちゃんだ!!」
龍太「おねーちゃん!!僕らだよ!?覚えてないの???」
店員「はぁ……」
困りはてていた。これはチャンス!!さぁ!!真司よ!!お前も男なら俺らを怒り彼女に話しかけるのだ。すいませんとでも言えば話はつながる!!と兄弟は思っていた。
真司「おい、お前ら…人違いだよ。あ、うどんの並盛3つ」
店員「かしこまりました。」
そういうと店員は逃げ出すように行ってしまった。
龍太「あー!!おねーちゃーん!!いかないでーーーーー。」
真司「…大丈夫か?お前ら?」
その言葉に武志が噛み付いた。
武志「大丈夫だよ!!どっちかって行ったらおっさんのほうが大丈夫なの!?あんな人がいるのに声もかけないなんて…男として
どうかしてるよ…全く」
真司「うっ…それは俺が悪かった…話しかけようとしてもできないんだよなぁ…」
武志「だから俺らが変な事言ってたのに…すいませんの一言いえば少しは話せたのに…」
しばらくの間沈黙が続いた。そしてうどんが来た。
店員「お待ちどうさま。うどん並3杯です。」
武志「あ、ご苦労様でーす」
龍太「少し考えたらお姉さんは僕らの探しているお姉さんとは違いました…すいません」
店員「あ…そうだったの?少し驚きました…私に兄弟がいたなんて…と思い少し動揺してました。」
武志(おい…やっぱりあのオッサンには勿体無いな…俺らが貰おうか。)
龍太(うん、そうしよう。よし、こういう時は昔っぽく物を言って名前を聞いてみよう。)
龍太「ご迷惑をお掛けしました…ところで…ここで逢ったのも何かの縁ですね。俺は龍太、こっちが武志。そして…これがシガナイ独身のオッサン」
真司「オ…オッサンとは何だ!!私にだって名前くらいあるぞ!!それに私は26歳だ!!」
顔が真っ赤だった。どうやらあまりにもじじいに見られたら困るようだった。しかし思わぬ幸運を招いた。
店員「あ…私も同じ年齢なんですよ。よろしくお願いしますね。」
真司「あ…どうも」
店員「私は高橋清子と申します…以後ごひいきに…あなた様は?」
真司「わ…私は…」
そこに武志が割り込んで適当なことを言った。
武志「オッ・サンです。」
清子「乙津さん?これからもよろしくお願いしますね。」
真司「あ…はい。」
清子「それでは失礼します。」
そういって清子さんは去っていった。
真司「乙津さん…」
向こうに乙津さんと認識されたので結構ショックがでかいらしい。兄弟はツルツルモチモチしたうどんを美味しそうに頬張っていた。何故か懐かしい味がした。
龍太「いやぁ…いい事したなぁ…この恋を見届けるまでは現代には帰れないな!!」
武志「ああ!!これは面白くなってきたぜ」
この兄弟はまだ知らなかった。清子に真司が乙津さんと認識されたことが自分らにとって幸運を呼んだことを…
第3話 完 話
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